グッドデザイン賞受賞『集合住宅 [下鴨の共庭住宅]』

公益財団法人日本デザイン振興会が主催する『GOOD DESIGN AWARD 2021』にて、『集合住宅 [下鴨の共庭住宅]』がグッドデザイン賞を受賞いたしました。

設計者︓中田哲建築設計事務所+好日舎
写真︓市川靖史

受賞対象の概要

※掲載している情報は、受賞当時の情報のため、現在は異なる場合があります。

概要

京都市左京区下鴨。第1種低層住居専用地域に建つ小規模集合住宅の計画。現在の賃貸物件の供給戸数はマンションと貸家が主流だが、その中間の規模だからこそ実現出来る住環境の提案。交通の便や床面積などの画一的な条件でなく、緑豊かな環境を提供し、建物のビジョンに共感する人に選ばれる集合住宅を目指しています。デザインのポイント1.敷地を分割せず1敷地に集合住宅として計画。小割した隣地間に生じる無駄なスペースを作らない。
2.シンプルなロの字型の建物配置。中庭を共有することで自然豊かな住環境を実現。
3.各戸に屋外空間を設ける。中庭に風が通り、住民同士のコミュニケーションにも繋がった。

デザイナー

中田哲建築設計事務所 中田哲+好日舎 中田貴子

利用開始

2021年4月

設置場所

京都府京都市

受賞対象の詳細

背景

京都市左京区。下鴨神社や鴨川へのアクセスのよい小さな木造住宅が密集する住宅街。老朽化した昭和の賃貸住宅3戸の建替え計画。交通の便や床面積などの画一的な条件で比較されるのでは無く、建物のビジョンに共感する人に入居してもらえる賃貸住宅を計画しました。通り抜けの交通量が多い道路から、いかにして静かな住環境を確保するか。豊かな庭をどのように配置するか。屋根付きの駐車場をどのように確保するかを検討。正方形に近い本敷地を3分割すると南北に細長い形状となり、カーポートを設置すると、ネコの額ほどの小さな庭しか残らず、各戸の間には使い道のない無駄な空間が発生します。本計画では1敷地に3住戸が中庭を囲い、大屋根がロの字型に繋がるプランとしました。

経緯とその成果

中庭を中心に東西北に住戸、南に駐車場と上部にテラスを配置。天井の低いエントランスを抜け、中庭の回廊から各戸の玄関へ。回廊から空を見上げると四角く切り取られた静かな空が出迎えてくれます。この計画の核となる中庭は、アオダモの木を中心に四季を感じられる植栽を植え、窓先に見える木立、樹木が作り出す陰翳が屋内からも自然を感じさせてくれます。各戸を大屋根で繋げることで生じた屋外空間を、専用の駐輪場や広いテラスとして使用。テラスでは朝食を食べたりハンモックに揺られたり多様な使い方が出来るだけでなく、中庭への風通しと隣戸の生活音への配慮を両立させました。また、前面道路周りにも緑を配置し、近隣を通る人々の目を楽しませてくれます。自然豊かな住環境を通じて住民同士の価値観が共鳴し、屋外空間を通じてコミュニケーションが育まれることを期待しています。

仕様

敷地面積:452㎡ 第1種低層住居専用地域(建蔽率60%、容積率100%) 建築面積:255.㎡ 延床面積432㎡ 主体構造:木造 2階建(建蔽率57%、容積率77%)

審査委員の評価

中庭型の集合住宅である。中庭を設けた集合住宅は、これまでにも数多く計画されてきたが、そこを囲う住戸数や規模、あるいは中庭のスケールによって実際には上手く機能していないものも少なくない。しかしこの集合住宅は、3戸という規模と、住人が自分の庭だとも感じ取れる適切なスケールによって、実に快適な空間として住環境に貢献している。さらに各戸のテラスが中庭に対してトンネル状に抜けていることで、この中庭は閉鎖的でない、心地よい開放感も獲得している。このような関係性であれば、おそらく住民相互の緩やかなコミュニティも育まれることになるだろう。

担当審査委員| 藤原 徹平   網野 禎昭   千葉 学   手塚 由比  

関連サイト

中田哲様によるドローン撮影の動画:https://youtu.be/a3QYjnGN8Xs

建築工房 京匠:https://flatagency.xbiz.jp/kyotakumi/info/simogamokj/